Interview_honma of Communication Design Lab 望月衛介・音楽と広告

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本間絹子(CMプランナー)

望月:様々な活動をされてますね。

本間:はい(笑)。

望月:実は僕と本間さんは電通入社が同期でして。何だか久しぶりな感じですね。

本間:そうですね。
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【電通入社のきっかけ】
望月:元々電通は入りたくて入ったんですか?
本間:そうでも無かったというと、今の時代の人には怒られると思うのですが……。その時は就職というものにまだちょっと甘さがあって、気持ちが疎かったんです。親もそれほど就職を望んでいるわけでもなく。ただ、親が自分を所有しているような面があって、そこから脱出してやろうと就職を考えたんです。でも「御社の○○に興味があって」というような各企業への興味のあるところをどうしても私は言うことが出来なかったんです。中々思いつけなくて。そこで、どちらかというと基本的に志望動機よりも自己PRを重視してくれるところを探しました。何が出来るかではなく、その人間に何をやらせたらどうなるのか。そういったような面を見てくれる企業に入ることが出来たらと思っていたら、必然的にマスコミ系の企業を多く受けていたんです。

望月:すると電通の他にもいろいろな企業を受けたんですか?

本間:そうですね。初めのうちは博報堂とかも受けていました。本当は電通よりも博報堂に入りたかったんですが、博報堂は落ちまして。そこで電通に入ったんです。そして、今では電通様様と感謝してます(笑)。 

望月:なるほど。ラジオを聴いている方には伝わらないかもしれませんが、本間さんはとても麗しい素敵な人なんですよ。同期で入社してきた人間の中でも、華の一人だったんです。

本間:またまた(笑)。

【電通入社後の配属の話】
望月:そして電通に入社してから、クリエイエティブに行かれるんですよね。元々クリエイエティブ志望だったんですか?

本間:いえ。クリエイティブのクの字も分かっていないひよっこで。とりあえずマーケティング志望と適当なことを言ってしまって。そこでもしマーケティングに入っていたら、使えなくて即クビになっていたと思います。後から聞いた話では就職試験の時のクリエイエティブ試験の作文が良かったらしく、いきなりクリエイティブ局に配属と言われまして。その時は生意気ですが、どうしようかとショックで泣いてしまったぐらいびっくりしました。OJTという現場研修で行ったクリエイティブ先も昼夜が逆転していて。私は一日十数時間も寝る人間だったので、こんな夜の仕事は無理だ!と。そこで、毎日上司に辞めたいとか局を変えてほしいと志願をしていました。今思えば生意気といいますか……。自信が無かったんです。でも今にして思えば、クリエイティブ局に入れてもらえて良かったなと感じます。

望月:配属先が決まるときって、ドラマがあるんですよね。

本間:十三階大ホール。

望月:昔の電通の本社には十三階に大ホールがあって、そこにまず全員が集められるんですよ。それぞれ全員が行きたい部署があるんだけれど、思い通りにならない人も沢山いるわけです。あと、僕らの時には地方勤務もあったりして。

本間:集められて、配属先と勤務地を言われるんですよね。

望月:皆どきどきしながら聞くんですけど、やっぱりその時は泣いてしまったんですか?

本間:本間絹子って呼ばれた瞬間、「はい!」って立ち上がって。で、「東京勤務クリエイティブ局を命ず」と言われて、びいびい泣いてしまって。

望月:ははは(笑)。

本間:周りにクリエイティブ局に行きたい人もいっぱいいる中だったから、「うわ、うざい!」と思われてたでしょうね。でも私はそれどころじゃなくて、本当に無理なんだ!と。その時は大変でしたね。

【クリエイティブ局配属後の試練】
望月:実際にクリエイティブ局に入ったら、どんな試練があったんですか?

本間:とにかく「自分には向いてない」と言い続けていたら、ある日ものすごい激コワな上司に当たってしまって……。そんなこと言ったら殺されるかもしれないですけど(笑)。それからは特訓の日々でした。「会社が怪獣に見える!怪獣に見える!」と言いながら、それでも頑張って通って、ペンを投げつけられたりしながら月金は徹夜でコピーを考えてという。

望月:初めはコピーライターとしての勤務だったんですか?

本間:初めはコピーライターです。上司もすごく有名なコピーライターの人で。その人は、物事の本質をすごく見極める人で。私はすぐに面白い言葉遊びとか表現に走っちゃうんです。彼はそうではなくて、物事の本質とは何か?という部分をぎゅっと感覚的に詰める人だったんです。直接教えてもらったわけではないんですけど、物の作り方とは本質を見極めることだというのは彼を見ていて自然に学びましたね。すごく怖い人だったけれど、彼が私の土台を作ってくれた人だったと思っています。

望月:特訓と言うと、千本ノック的に同じテーマに対して違うアプローチから言葉を選んでいくというような作業を何度も何度もやるような感じですか?

本間:そうです。あと、仕事も沢山の仕事を同時にやらされていて。全部に(コピーを)ばあっと書かされるんです。ボディーコピーから何から何種類も何種類も。で、月金ぶっ続けで怒られてトイレで泣くという……。「お前の泣き顔をCMに使わせてくれないか?」と別の先輩に言われ、プレゼンのカンプ用に泣きシーンを撮られたりもしましたね。笑 土曜日にデザイン事務所の前の喫茶店で上司と打ち合わせをして、しくしく泣きながらコピーを見せて、コピーが決まったらそのデザイン事務所に私だけ行って朝まで修正をして。その後はまたデザイナーの方には待ってもらってボディコピーを整理して……というような毎日でしたね。

望月:その時はどう思ったのですか?

本間:本当に辞めたいと思ったんですけど、自分には何も無いから辞めたところでどうしていいかも分からなくて。だから、目の前にあることを一生懸命やってそれでも駄目なら辞めようと。とにかく目の前のことに一生懸命向き合うという気持ちだけはあったんです。そこから逃げてしまったら、また逃げる人になると思って。そこだけは根性でしたね。

【仕事の手ごたえを掴んだ瞬間】
望月:そのような状況からの転機といいますか、最初の手応えをつかんだのはどのような出来事でしたか?
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本間:意外と面白いものを書けているとは思っていて、色々なところから「コピー書いてよ」と声をかけて頂いていたんです。そのような中で、色々な人に「テレビ(の仕事)やらないか」とあちこちに連れて行かれていたんです。でも私は全く当時CMに興味が無くて。家でもCMが始まるとトイレに行く人だったんです。CMは映画と違って、映像は汚いし申し訳ないのですが観るものではないし、観たくないなと思っていて。一方でやはりグラフィックは素人目にも美しいなと感じて、そういったものには興味を持ってたんですね。だから、「CMはあまり好きじゃないんだけどな」と思ってました。でも足を運ぶうちに、コピーと違ってテレビの仕事は、より「自分の好きなこと」や「自分のやりたいこと」に気持ちが向くようになったんですよね。

望月:その事がそれまでの仕事とは違って新しくて、面白く思えてきたという事ですか?

本間:ええ。あと「自分って何なんだろう?」という事を深く考え出しました。「自分の好きなことって何だろう」「そもそも自分って何なんだ」という事をCMをきっかけに考えて。福里(真一)さんという先輩に出会った事も大きかったですね。たまたま上司が福里さんを連れてきて一緒に作業をした時に、CMも「本質」を掴まえる仕事なんだ!という事を思って。福里さんは面白おかしいくだらないコンテを書くのだけれど、ズバッと真ん中を突くコピーががっちりしているんです。真理を突いている。あ、そういう事なんだ!と思いましたね。この商品の、この気分を掴まえる。そういった仕事なんだと思ったら、急に面白く思えてしまって。だから、福里さんは様様です。

【楽曲紹介1】
望月:このあたりで一曲選んで頂きたいと思います。

本間:資生堂の「フィーノ」のCMの曲を。

望月:この曲は本間さんご本人が作詞作曲をされた曲ですよね。

本間:はい、そうです。

M1:資生堂「フィーノ」CFソング「今日を大切に」


【毎日を丁寧に生きるということ】
望月:Communication design lab 望月衛介「音楽と広告」。今日のツタワリストはCMプランナーでコピーライターの本間絹子さんをお迎えしています。この曲は資生堂のコマーシャルソングですよね。

本間:そうですね。

望月:この曲はどのようなきっかけで作られたんですか?

本間:丁度、私が「燃焼系アミノ式」とかトヨタ自動車の「パッソ」といった歌もののCMを作っていた時にお話があったんです。


望月:一連のヒット作を作られていた時ですね。

本間:「凄く良い商品なのに、真面目な商品過ぎて商品の売りが絞れていない。だから、今一つ広告が届いていない。そこを一発元気にしてほしい」という話がオリエンの時にあったんです。真面目な商品だからこそ、アミノ式やパッソのようにただ単に盛り上げればいいというのではなく、商品の本質を捉えて上げたいなと凄く思いました。一方でその頃の私は物凄く忙しくて、体を壊しかけていたんですね。しかし、皆が喜んでくれる限りは何とか頑張ろうと思っていました。でもある日「あれ、自分の人生って何だっけ?」と人生を振り返ってしまったんです。その様な自分の状況がリンクしていて、とりあえず一度基本に戻りたいと思ったんです。まずは毎日を丁寧に生きるというのが、一番大切なことなんじゃないかと。

望月:なるほど。

本間:既にフィーノには「髪を愛そう」というコピーが付いていたんですよ。髪を愛するってどういうことなのかなと考えた時に、まず髪の毛というのは毎日洗うものだと。つまり髪を愛するということは、毎日を愛するということだと思ったんです。では、毎日を愛するという事はどういうことだと考えた時に、それは毎日を丁寧に生きるということなのではないかと。そして、そのことはその時の私がしたかったことと凄くマッチしていたんですね。それこそ、当時の私はオンオフの切り替え無くずっと仕事のことを考えていて。時代的にも当時は皆忙しく働いていたんです。そんな皆に向けて、一番大切なことは毎日をきちんと丁寧に生きることだという想いを伝えられないかなと。そういった言葉で、皆が元気にならないかなと思ったんですよね。何だかあまり上手く言えないのですが……。子供を産んで、ちょっと頭がぼけていて(笑)。

望月:(笑)。

本間:勝手に自分の表現したいことを表現するというよりは、商品の商品らしさの本質を捉えて、それを自分らしいやり方で表現していくという仕事のやり方をしていて。そして、たまたまフィーノの商品の本質がそこにあると思って。「髪を愛する」ということは、毎日を愛するということであり、毎日を丁寧に生きること。ではそれはどんなことなんだろう?という気持ちを歌詞にしてみたんです。それで「おはようと言いましょう。みんなに言いましょう」とか「丁寧に恋しましょう。丁寧にケンカしましょう」といった今日を大切にする気分というのを歌詞にして、歌にして作っていたという感じですね。

【作詞作曲のきっかけ】
望月:作詞作曲というのは、中々普通の人にはすぐに出来るような作業では無いと思うのですけど、元々音楽はやられていたんですか?

本間:小さな頃にピアノを習わされたりはしたんですけど、ピアノは途中で土下座して辞めさせてもらいました。ギターにさせてくれと(笑)。でもギターも途中で指が痛くなってしまって。そこでギターの先生が妊娠されたことをきっかけにフェードアウトしたという。

望月:すると音楽はそんなには深くやっていたわけではないんですね。

本間:学校で聖歌を歌う時にソロを歌ったりはしてましたね。でも自分が特別歌が得意とか好きだというのは意識していなかったですね。

望月:広告をやり始めてから、広告の仕事と歌をくっつけてみようかと思われたんですか?

本間:そんなことも全然思って無かったですね。たまたま、とある製薬会社の仕事をする機会がありまして。それは女の子の肌荒れを良くするビタミン剤の仕事だったんです。肌が荒れると、気分は怪獣みたいになるし、肌も怪獣みたいになるよねと。そこで「肌荒れ怪獣アレゴンは、ビトンほにゃららでやっつけろ♪ビタミンHの効きごこち。綺麗な私にベリーマッチ。ビタミンHのビトンなんとか♪」っていう歌を作って。他にも「失恋したてのアレゴンは、ビトンテラピでなぐさめろ♪一日二粒と涙粒。次の出会いが待っている。ビタミンHのビトンなんとか♪」っていうような歌があったんですけど。そういった女の子の気分を歌にして、こんなのを作れますよと改めて音楽家さんが曲を作って上司にプレゼンしたんですね。すると上司に、いやプランナーが作った歌が一番伝わりやすいから、そのままプレゼンしなよと言われまして。そこでプレゼンしたらクライアントの方に、そのまま君が歌っていいよと言われ、決まったんですね。

望月:そんな決まり方あるんですね(笑)。その時、これは武器になるぞ!と自分の中で思いましたか?

本間:全然!そんなことは全く思わなくて、それでいいんだっていう感じで。物を作る時って自分が良いものだと思わなかったら、絶対に良いものにはならないんですよね。ちょっと良いっていうのも駄目なんですよ。自分で絶対良いと思って無いと人には届かない。私はそれを好きで、良いと思っていたので出したんですけど、だからといってそれが自分の武器になるとは思っていなかったです。その後も5年ぐらいの間しばらく歌ものは作って無かったです。

望月:その後に作ったものが「燃焼系アミノ式」ですよね。それが5年後ぐらいですか?

本間:ええ。たまたま歌ものにしました。ノリが良い商品だったので。だから歌っちゃったみたいな。私生活でも甲府に行ったりすると「山山山~♪ 川川川~♪」とか歌っちゃっていたんですよ(笑)。気分が盛り上がってくると歌が出てくるというのは元々あったんです。アミノ式はパッケージは既にクライアントの方で作られていたんですが、それが少し古めの体操みたいな所帯だったんです。それでタッタカタ!タッタカタ!みたいな気持ちになってしまって(笑)。で、出てきたのが自然とああいう歌になってしまったと。

【制作の際に大切にしていること】
望月:意図してやるとか、クライアントのオリエンに合わせてやるというのではなくという感じですか?
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本間:いえ、一番大事なのはオリエンです。その商品の持つ気分を感じ取るんです。「この商品が世の中に与える喜びって何だろう?」というのを一番最初にものすごく考える。絶対に私は(発想が)商品発です。こんな気分だから(表現を)付けちゃいましたというのは無いです。基本的に商品発で、その企業のカラーもあるし、企業が商品に込めた思いもある。特に開発者の方の話は必ず聞きます。商品が持つ雰囲気というのも必ず大切にします。やはり、この商品はこうでこうでこうだからこういうエンタテイメントにしましたという風に理詰めでやっていくと、ロジックとしては合っているけれど商品の雰囲気からずれるという人がいるんですよね。その商品が持っている雰囲気や匂い、カラーというのをぐりぐりぐりっと考えたり、何が人を喜ばせるポイントは何だ?っていうのを考えると、言葉なり想いが出てきてそれが音になったり歌詞になったりしていくという感じなんですよね。だからクライアントの求めている物とあまりぶれないです。何となく作っちゃいましたというのは無いです。昔はありましたけどね(笑)。ギャグものとかナンセンスものを作っているときは。

望月:すると曲や歌というのは何パターンも作る訳では無く、一パターンでこれだ!っという感じですか?

本間:最初の頃はそうだったのですが、物凄く会社にうざがられて(笑)。一案しか出さないから。クライアントは確かに気に入ってくれるけど、こいつは駄目だと。で、後になってやっと反省したんですよ。何で!?良いのに!良いじゃん!と思っていたんですけど、それじゃ駄目なんだと。相手に選ばせてあげないと駄目なんだなと。そりゃそうだよなと思って、今は3案や4案、全て別のパターンの歌を作ってます。この間もプレゼンがあったんですけど、どっちも良いと言われたりもしました。

【相手に真摯に向き合うということ】
望月:実は広告の世界では「選ばせる」というのは結構大事なプロセスだったりするんですよね。

本間:私は本当はそうは思わないんですけどね。本当に良いと思っていればそれで良いと思うんですけど、そうじゃないかもしれないという疑いの気持ちを持つという点では良いと思います。自分は絶対に良いと。それがクライアントのためであり商品のためであると思っても、こういうのも有り得るかもという別の視点からの提案をするというのは意味があると思います。でも、風呂敷広げてあんなのも有りますこんなのも有りますというプレゼンというのは非常に無責任でレベルが低いプレゼンだと思ってます。そういうことはエンタテイメントではあっても、本当に企業と向き合ってはいないと思って。こんなのやあんなのが有りますがどうしますか?というのは、一件嬉しそうだけど、相手もどうしていいか迷ってるんですよ。プロの意見を聞きたがってるんです。それなのに風呂敷を広げるだけというのは、本当の意味で企業の味方になってないというか。一緒になって、その物を売っていきましょうという意気込みを感じないと思うんです。本当にその企業のことを考えていたら、絶対にこれで行きましょうという想いが出てくるはずだと思うんですよね。ああいうことも出来ます、こういうこともできます。この案のこういう点はこういう風にして絶対にフォローしますという。そういうところで、もっと皆真摯になれよ!というか(笑)。

【商品の良い所とは】
望月:自分のあまり興味の無い商品を手掛ける事もあるんですか?

本間:一応、上の方の人が選んでくれてはいます。ただ、商品って人間と同じで必ずどこかには良いところが有るんですよ。どんな商品も千三つで出てくるわけです。メーカーはある程度のお金を掛けた上で千個に三つの確率で世の中に商品を出してくるのだから、必ずどこかに素晴らしい誕生意義があるんですよ。だから、そこを引き出してあげて、この商品はこんな風に皆の生活を幸せにしてくれるよと。それを使ってこんな風に素敵になってねという応援歌になればという気持ちでいつもやってます。その商品に興味が無かったとした時に、それは世の中の人は皆同じだろうと考えるんです。本来は新商品って必要無いじゃないですか。商品を出して買ってという経済的な助け合いの意味合いはあるけれど、本当は必要無い。それでも助け合うために絶対に生まれてくるもので。私が興味無い物は、きっと皆も興味無いと思うんです。だからどうしたら私がその商品を欲しくなるだろうかというのはすごく考えます。基本もう欲しくない物を、自分も含め、欲しいと思わせるようなポイントを見つけるということを大事にやっています。

【人との良い出会い】
望月:そのようなことを考えていく中で、良かったなと思える出会いというのは有りますか。

本間:表現するというポイントに関して言えば、最初に出会った怖い上司しかりフォーノで出会ったカメラマンの上田義彦さんもそうなのですが、自分の殻を破って生きていくといいますか。皆ある程度自分を装って生きていると思うんですけど、本当のあなたは何ですか?という部分をぐりぐりと脱がされるといいますか。そういったむき出しにされていく感覚というのが最初の上司と上田義彦さんには有って。素っ裸になることが表現というような気持ちにさせてくれた。表現に嘘が有っては人には届かないということが良く分かりましたね。もっともフィーノをやった時にその事をやり過ぎて死にかけましたね(笑)。

【楽曲紹介2:音楽活動について】
望月:「おはなしレコード」というCDを出されていますが、これはどういうCDなんですか?
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本間:これは2007年に作ったCDでして。アミノ式やパッソやカテキン式やフィーノをやっていく中で、歌が私が出来る人を幸せにすることなのかなと思い始めた時に、それは私が2歳ぐらいの頃から聴いていた「おはなしコンサート」という30巻くらいあるレコードのおかげかもしれないと思ったんです。そのレコードはアンデルセン童話やグリム童話のお話が色々な人のナレーションとオーケストラに乗せて入っていて。そのレコードを小さな頃から聴いていたから、耳から物事を想像するという訓練が出来ていたのかなと思って。それへのオマージュとして作ったんです。誰かが同じように生きる喜びというのを耳から感じ言ってもらえたら嬉しいなと。今を活き活きと生きるということの素晴らしさ。皆、今しか生きていないから、今を大切に生きるということが幸せなんだよと。それが全てなんだということをを伝えたくて。今を活き活きと生きることの大切さ。そのことへの感謝を込めて作ったものです。

望月:ではこの中から一曲紹介してください。

本間:「おはようのうた」です。

M2:本間絹子「おはようのうた」
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【音楽活動に対する反響】
望月:本日はCMプランナーでコピーライターの本間絹子さんをお迎えしています。この曲はNHKの「みんなのうた」になっているんですよね。実際に流れて、反響はいかがでしたか?

本間:アミノ式とかとは違って広告を打っているわけではないので、そういった違いはありますね。でも友達とかからは幼稚園に持って行って先生に渡したとか(笑)。一番嬉しかったのは、保育園の先生になっている友達が「おはようのうた」を幼稚園中で歌ってくれたという。それは嬉しかったですね。あと、私の知り合いがバス停でバスを待っている時に、偶然ベンチで隣に座っていた人が知り合いのがん患者の人が「おはようのうた」を聴いて元気を貰ったと話しているのを聞いたというのを人伝に聞いた時に震えが来ました。人に元気に、癒す事が出来て本当に良かったなというのを実感できた瞬間でした。

望月:これはシリーズ化して作っていくのですか?

本間:次は70歳の時に「赦す」というのをテーマに「おはなしレコード」をまた作りたいと思ってて。自分が許せない人間だから作りたいなと(笑)。でも、もうちょっと手前で何か出来ないかという話もあって。自分が育児やその他の事も色々している中で思い通りにいかない事も沢山あって、ほっとしたかったり、理想だけじゃなくて気を楽に持ちたかったり許されたかったりという瞬間って沢山あるなと思って。皆あると思うし、自分もあるんです。そういった気持ちを楽にしてくれたり、等身大の自分が求めたり発したいと思うものも作りたいと思います。でも、単に癒すだけじゃなくてプラスそこで人をアップして挙げられる物が良いなと。元気づけて、「よし、また明日からやってやる!」というように、皆が少しでも気持ちを上げられる物が作れたらいいなと思っています。

【子育てについて】
望月:今は子育て中なんですよね。どうですか?実際子育ては。
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本間:大変ですね(笑)。男の子なんですけど、やんちゃで甘えん坊で大変です。喜びと大変さって両方レベルアップしていくんですよ。育てていると。面白い生き物ですね(笑)。子供って生きる術を瞬間瞬間身につけているわけですよね。目の前のことに一生懸命だから、やはり見ていて感動しますよね。今を生きているな、という気がして。過去や未来って無いって言うじゃないですか。人には今しかないと。今を一生懸命に活き活きと生きるというのが幸せになる方法だなと子供を見ていると思いますね。

望月:そのことが作品作りや仕事に繋がるということもありますか?

本間:昔は作るものにふざけたようなものが多かったんですよ。その後、歌とか、歌プラス思想というようなものになって。「良いものとは何か」「美しいとはどういうことか」「生きるとはどういうことか」というような。すごくストイックになっていた時期があったんです。でも今は子育てをして現実に向き合って。大変なことも踏まえたうえで、やっぱりゆとりを持って、まあまあまあというような気持も大事にしながら色々なことを抱えながらも、色々な自分を許しながらも前向きに生きていく。でも、全て受け入れて全てオッケーと言いながらも、その中でアップしていく。そう言った物を作っていけたらと思います。勝手に一人でストイックになるのではなく(笑)。

望月:すると笑いなんかもどんどん許せるようになったと。それもそれでオッケーと。

本間:そうですね。笑いもオッケー。思想もオッケー。歌もオッケー。今は自分がその商品のため、企業のため、世の中のために、皆がハッピーになるために出来ることは何でもトライしていきたいなと思ってます。

【今後の活動について】
望月:広告人として、個人として、アーティストとして今後やっていきたいなと思っている事ってどんなことですか?

本間:本当は70歳でさっき言ったレコードを……(笑)。あと、詩ですね。歌に乗せずとも、詩だけで人を元気づける物が出来たら。

望月:なるほど。

本間:でもそれも自分の欲望かもしれないです。欲望を没した時、完全に自分を失くした時に良い物が出来るというのが自分で分かってるんです。自分のために何かと言うのは、私には無いんですよ。人のためにと思った時や、その商品のためにと思って自分を失くした時に良い物が出てくるんです。透明にした時に、ぽんと出てくる。それは多分一生変わらないんです。自分のために、例えばお金を稼ごうとして何かをするとなったら、多分しようとする気持ちすら無くなってしまうと思います。何かを出す気持ちが自分の中で無くなる。勿論自分らしさは使います。例えば、(私にとって)歌というのは自分らしさですよね。自分が生きてきた中で獲得する事が出来た、人を幸せにすることが出来るもの。それは活かすんですけど、そこに邪念が有ってはいけないというか。自分のためじゃないんですよ。これが誰かを元気づけるはずだという想い。それもエゴなのではないかとぐるぐるしちゃうんですけどね(笑)。誰かが幸せになりますように。それで自分も元気づけられるんですよね。つまりは愛するってことなんですよ。愛すれば、幸せになるんですよ。不思議ですよね。誰かを幸せにしたいと思った時に、幸せを感じますね。

【学生へのメッセージ】
望月:最後に、学生で広告業界に興味がある方が番組を聞いていると思うのですが、そういった方にメッセージはありますか?

本間:広告業界に限った話では無いかもしれないですけど、今の時代は色々と就職も厳しかったり社会的にも不安定と言われますけど、時代は関係なく一回きりしか生きられないのだし、自分は自分(の人生)しか生きられないのだから、せっかくだから自分自身の人生を少しでも幸せに生きられるように自分自身で努力してみる。自分を幸せにしてあげる。私が一時休んだというのも、自分を幸せに出来なかったら人も幸せに出来ないという想いもあったんですよね。インターバルを置いたというのは。自分の幸せって何なのか。自分が楽しい瞬間って何なのか。自分のことをしっかりと見つめてあげる。それで自分を幸せにしてあげて、いつか仕事を持った時に誰かも幸せにしてあげられるエネルギーを持てたら素敵だなと思います。

望月:これからも沢山の素敵な作品が生まれることを期待しています。是非、頑張って作ってください。

本間:はい。ありがとうございます。

望月:本日のツタワリストは、コピーライターでCMプランナーの本間絹子さんでした。ありがとうございました。

本間:ありがとうございました。
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