Interview_wada of Communication Design Lab 望月衛介・音楽と広告

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和田龍夫 (サントリー酒類株式会社 宣伝部長)

【ファッションへのこだわり】
望月:今日は一段と派手なファッションですね(笑)。和田さんは派手なファッションに関して、一言お持ちだそうですが。
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和田:僕は「広告」をファッションで表現したいと思っていまして。広告はまず振り向いてもらうことですよね。そして、振り向いてくれた方の記憶に残ること。
そうして残る記憶こそが「ブランド」です。僕の場合は派手でハッピーな印象が残ればいいなと思っていて、そういったファッションをすることで人が集まってくるんじゃないかと考えています。

【広告代理店に入らなかった理由】
望月:元々、和田さんは宣伝がお好きだったんですか?

和田:小さい頃からコマーシャルを見ては歌ったり踊ったりしてましたね。特にサウンドロゴが大好きで、そういったものに惹かれていました。だから、幼心に「自分もこういった仕事がやれたらいいな」とは思っていました。

望月:普通、宣伝が好きなら広告代理店や制作会社を目指すのではないかと思うのですが、和田さんはそういった道には進まれなかったのですね。

和田:何の商品の宣伝をするのかということも重要だと僕は思っているんです。やはり自分の好きな商品の宣伝をしたいんですよ。
広告というのはテレビやラジオといったメディアの広告だけではなく、その商品自体も最大の広告で、例えばパッケージやネーミングは、その商品のコミュニケーションの全ての起点になりますよね。パッケージやネーミングからメディアの広告までトータルのコミュニケーションデザインをしていきたいということは昔から考えていたことでした。

望月:すると和田さんは就職活動の際にはメーカーを主に受けられたのですか?

和田:メーカーの宣伝部を志望していました。特に自社内に制作機能を持っている会社に入りたいと思っていましたね。

望月:日本で言うと、サントリーさんや資生堂さんのような会社でしょうか。選択肢が限られてしまうような印象を受けます。

和田:色々考えたんですけど、結局入社の決め手になったのは「酒が好きだ!」ということでした(笑)。

望月:やはりそこですか(笑)。

和田:好きな物の広告だと、思い入れも強くなりますからね。好きな酒の広告をやりたいなと思ったんです。

望月:和田さんは、お酒は強いですか?

和田:人並みですよ。

望月:その人並みが尋常じゃないんじゃないですか?(笑)

和田:そうですね(笑)。やっぱりお酒は好きですよ。

望月:就職活動はサントリー一本だったんですか?

和田:いえ、他の会社も色々受けました。ただ、色々受けた中でもサントリーの社員の方はすごく良い方でしたね。実は僕、最終面接はアロハで行ったんですよ(笑)。
「ありのままの自分を見せてほしい」と言われたので、ありのままの姿で行ったんですけど、役員の方がじろりと僕を見て10秒間ぐらい黙ってしまって。その後、部屋がざわついて「君は良い!この感じがサントリーに欲しかったんだ!」と言われたんです。その瞬間に「この会社に入ろう」と思いましたね。

【新人時代について】
望月:サントリーに入社後、希望通りに宣伝部に行くことはできたのですか?

和田:いえ、そんなに簡単ではありませんでした。宣伝部に行きたいというアピールはしていたんですけど、最初に配属されたのは事業部というところで。企画を担当する部署なのですが、朝から晩まで数字漬けの日々でした。

望月:和田さんにとって転機になったのはどういった出来事でしたか?

和田:僕が宣伝部に行きたがっている事を知っていた上司が先に宣伝部に異動になったんです。そして、その上司の方に「お前、宣伝部に行きたがってたよな。一緒にやってみるか?」と声を掛けて頂いたおかげで、僕も同時期に宣伝部に移ることが出来たんです。
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やはり思いはアピールしておくべきもので、内に秘めてるだけでは駄目なんですよ。ファッションも同じですが、相手に伝わるように外に出していかないと。振り向いてくれなかったり、気付かれなかったりすることが一番悲しいじゃないですか。
日本人って思いを内に秘めて気付いてもらおうとするようなところがあるんですけど、世の中そんなに甘くないですよ。やっぱり気付いてほしいならPRしないと駄目だと思います。

望月:宣伝部に移り、まずはどんなお仕事をされたのですか?

和田:ウイスキーのコミュニケーションの仕事でした。

望月:サントリーの宣伝部は完全にインハウスですか?

和田:代理店さんに発注することもあれば、社内のコピーライターやデザイナー、カメラマンといったチームで完全にインハウスで作ることもあります。先輩方と一緒にやるのは大変でしたけど、充実してましたね。コピーを持ってくと、先輩のコピーライターの方に赤ペンで真っ赤にされて戻ってきたりして。完全に赤ペン先生状態でしたね(笑)

望月:そういった経験を通じて、広告のイロハを学ばれたんですね。

【楽曲紹介1】
望月:このあたりで一曲、思い出のCMソングをご紹介頂けますか?

和田:せっかくですので、私がサントリーに入社するきっかけになった曲をかけたいと思います。この曲を聴いて「サントリーって良いな」「お酒って良いな」「大人って良いな」と思いました。

#1 サントリー・オールドCMソング「夜がくる」


望月:この曲を聴くと、ウイスキーが飲みたくなりますね。この曲は何年ぐらい使われているのでしょう?

和田:ちょっと定かではないですけど、私が小さな頃から使われているので40年近くになるのではないでしょうか。

望月:40年ですか!サントリー・オールドは歴史が長く、色々なバージョンがあるCMでもありますよね。

和田:この曲を使って、自分でも一度はCMを作ってみたいなと思ってましたね。そうして宣伝部に移って2年後ぐらいに、長塚京三さんと田中裕子さんにご出演頂いて、「団塊世代を応援する」というコンセプトで「恋は遠い日の花火ではない」というコピーのCMを作らせてもらったことがあります。

望月:あのCMはヒットしましたよね。

和田:おかげさまで評判も良く、オールドの売り上げも伸びました。売りに効くCMだったんじゃないかと思います。

【商品開発とクリエイティブ・ディレクション】
望月:和田さんは宣伝部に移って仕事をされた後、ビール事業部に移られたんですね。これはどういったきっかけがあったのですか?

和田:本当はもっと宣伝がやりたかったんです。ところがある時、社内で宣伝部の立場から商品開発に参加するプロジェクトチームが出来まして、そこに首を突っ込んでいるうちに完全に商品開発に移ってしまったんです。そうしてしばらく商品開発をやってました。

望月:ある意味では、商品開発からトータルでコミュニケーションをプロデュースするという当初の目的に近い異動だったのではないですか?

和田:商品開発ってクリエイティブ・ディレクションなんですよ。パッケージやネーミングを決めたり、誰にデザインを発注するかを考えたりとか。そういった部分をディレクションしていくことが出来るので、面白い仕事ではありました。

望月:ちなみに和田さんはどのような商品を手掛けられたのですか?

和田:手掛けたものの中で、割と上手くいったのは「マグナムドライ」ですね。マグナムドライは発泡酒なんですけど、非常にヒットしましたね。その他には「ダイエット生」「純生」といった商品を手掛けました。

#マグナムドライ


#ダイエット生


#純生


望月:色々な商品を手掛けられているんですね。

和田:大型の商品は年に1本なんですよ。3年がかりで一つの商品を出すということも結構あったりします。

望月:また、和田さんはRTD部長を担当されていたそうですが「RTD」とはどういった意味でしょう?

和田:RTDは「Ready To Drink」の略です。缶に入っているチューハイやカクテルをイメージして頂くと分かりやすいかと思います。

望月:和田さんはRTD部でも商品開発を担当されたのですか?

和田:ええ。「-196℃」という変わった名前のドリンクや、「カロリ。」「ほろよい」といった商品を開発してきました。

#カロリ。


#ほろよい


望月:いずれも今でも人気のドリンクですよね。

和田:そうですね。自分が作った商品が今でも残っているというのは非常に嬉しいことです。

【ハイボールの大ヒット】
望月:和田さんは2008年に宣伝部に戻られ、宣伝部長に就任されていますね。

和田:宣伝と商品開発、両方を経験した上で宣伝部長という形で宣伝部に戻れたことは非常に自分にとって大きいです。今は自分にとってこの仕事は天職なんじゃないかというぐらい楽しんで仕事をしています。

望月:宣伝部に戻られた後、和田さんはどのような仕事をされたのでしょうか?

和田:最初に手掛けた仕事は「ウイスキーを復活させよう」というプロジェクトでした。結果、そのプロジェクトはハイボールのキャンペーンに繋がっていき、おかげさまでハイボールは大ヒットしました。

望月:ハイボールのヒット以前、ウイスキーは長い間、低迷していましたよね。

和田:25年間、ずっと低迷していました。四半世紀ですから、若者にとっては忘れ去られたお酒と言っても過言では無いくらいですよね。ウイスキーは三重苦を持ったお酒と言われていたんです。「キツイ」「ダサイ」「食事に合わない」と(笑)。

望月:その後、ハイボールが出てきたことで状況が変わったんですね。ハイボールは決して新しいものではないですよね?

和田:ハイボールは飲み方なんですね。ウイスキーをソーダで割って、そこにレモンをちょっと搾って柑橘系の風味を付けるというのが最近我々が提案している飲み方なんですけど。
ただ、こういった飲み方自体は昔からあるものです。日本でも戦後にトリスハイボールが一世を風靡したりして。
でも、今の若い人はそういう時代を知らないですよね。若い世代の方から見ると、ハイボールは新しくて懐かしいものなのかなと思います。

望月:ハイボールのキャンペーンではどのような戦略を立てられたのですか?
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和田:ウイスキーに興味が無い人は「何年熟成してます」というようなことを言っても振り向いてくれないわけです。
だからウイスキーそのものを売るのではなく、ハイボールという飲み方が素敵で自分も飲んでみたくなるという風にお客さんの気持ちを向けようと考えました。最終的にお店で一杯ハイボールを注文してもらうために、コミュニケーションの全てのベクトルを合わせようと。

望月:まず「ウイスキー」という単語を使わないんですね。「ハイボール」という飲み物ではないかと思ってしまいそうです。

和田:ウイスキーという言葉は使わずに、まずハイボールを飲んで頂いて、ハイボールがウイスキーで出来ている事に気付いた時に「ウイスキーって意外といけるな」と思って頂けたらいいなと考えていました。

望月:今までのウイスキーとは売り方が逆ですね。今までのウイスキーと言ったら、樽何年という風に熟成されているイメージでしたが。

和田:例えばサントリーには「山崎」という12年物の良いウイスキーがあるのですが、そういった世界はそれはそれで良いと思うんです。
ただ、それだけではお客さんが拡がっていかないんですよね。まずはお客さんの頭数を増やさないといけないだろうということで、角瓶やトリスを中心にハイボールで広げていこうと。当時はウイスキーを飲んでいる人の人口が800万人ぐらいしか居ないと言われていたんです。それを増やしたいというところから、キャンペーンがはじまりました。

#山崎
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望月:すると、ハイボールのターゲットは若者だったのですか?

和田:若い世代ですね。20~30代で、特に30代をターゲットにしていました。あまり若い世代だとお酒の量自体もそれほど多くないですし、少しお酒の味を覚え始めた若い世代ぐらいが良いだろうという感じでした。

望月:そうしてハイボールはクチコミで段々と拡がっていったんですね。

【ハイボールのイメージ戦略】
和田:ハイボールのキャンペーンでは、お店にポスターを貼っていくことが戦略の中心だったんです。そこで考えたのがハイボールを注文したくなるキャッチコピーで「ハイボール、はじめました」という一文にしたんです。
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望月:「冷やし中華、はじめました」みたいな感じですね。注文しなくちゃ!というような気持ちにさせられますよね。

和田:気づきを与えるコピーなんですよね。身体を動かし、態度を変容させるためのコピーが「ハイボール、はじめました」だったんです。ハイボールが美味しいというコピーではなく「はじめました」というところがミソで。そのコピーを中心としたポスターを作って、ありとあらゆるお店に貼ってもらおうということをしました。

望月:お店をメディアにしてしまおう!と。

和田:このことは僕たちにとって、コミュニケーションを考える上でのコペルニクス的転回でした。
通常、居酒屋さんや業務店さんは「得意先」であって、何ケース取ってもらおうと御用聞きに伺う先でした。
ところがお店をメディアとして捉えることで、ここにポスターを飾ってほしいとかグラスを置いてほしいといった具合に「注文取り」から「提案型」の営業に変わったんですよね。宣伝も全面的にバックアップするために、お店でハイボールを頼むと楽しそうだなというようなCMを作ろうと。それが小雪さんに出演して頂いたハイボールのあるお店のCMになったんです。

望月:小雪さんと言うと少しお姉さんなイメージがありますよね。

和田:お客さんとの距離感をどうするかというのが一番難しいポイントなんですよね。遠すぎても駄目だし、近すぎても駄目なんです。あのCMでは「ちょっと憧れのマドンナ」のポジションに小雪さんを置いて、そこに集う男たちとしてあんまりイケメンではなく三枚目過ぎずといった感じのおぎやはぎさんを置いて「おぎやはぎの隣に自分が居ても良いんじゃないか?」と思わせるような設定にしてみました。

望月:あのCMを見ていると、ハイボールは料理にも合いそうな感じがしますね。



和田:あのお店では必ず料理が出てくるという設定なんです。それも小雪さんの手料理で(笑)。
CMを作るにあたって、実際に色々なお店を回ってみたんですよ。僕らが行きたくなるようなお店は、きっと若い人も行きたくなるんじゃないかと。実際、若い人も僕らが行きたくなるようなお店は「行きたいです」と言いますし「こんなところに綺麗なお姉さん居たら最高ですよ!」と言いますからね(笑)。だから、あのCMでは実際にあったら行きたくなるようなお店を設定してみました。

望月:実際に味も料理に合うようなものにしてあるのですか?

和田:ハイボールはウイスキーをソーダで割るもので、そこに「ちょいしぼ」と言ってレモンを少し搾っているんですね。
ウイスキーはアルコール度数が40度できつくて飲みにくいお酒なのですが、このように割ると度数が5度から8度ぐらいになって飲みやすくなるんです。また炭酸が入っているので、飲むと胃液が刺激されて食欲がわいてくるんです。それでいて口の中はさっぱりしますし、後味がレモンなのですっと味が消えるんですよ。これがビールだと口の中に苦みが残ったりするんですね。
だから最近の若い人たちはビールよりもハイボールの方が飲みやすいという人も多いですね。

【宣伝と営業の連携】
望月:お店をメディア化するという戦略においては、宣伝部と営業マンの連携が重要になりますよね。この点はどのような工夫をされたのですか?

和田:営業を宣伝がバックアップするとは言っても、100パーセント言うことを聞いてしまうと宣伝がバラバラになってしまいますよね。だから全体のトーン・アンド・マナーなど守るべきところは守りました。
例えばキャンペーンでは、広告のご当地バージョンを作ったんですね。例えば仙台なら「仙台の夜は、ハイボールからはじまる。」と。東京は単に「夜は、ハイボールからはじまる。」というコピーで、その他にも「福岡の夜は、ハイボールからはじまる。」などと少し地方色を付けたバージョンを作りました。ただし全体のトーン・アンド・マナーは変えていません。このことを、僕らの間では広告のパターンメイドという言い方をしています。

#ご当地キャンペーン
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望月:パターンメイドというと洋服によく使われる言葉ですね。

和田:そうですね。その服の基本的なコンセプトは変わらないのだけれど、その人の体型に合うようにフィットするようにアレンジするという。エリアバージョンは「サントリーは福岡のためを思ってオリジナルメイドの広告を作りました。是非、よろしくお願いします」というようなことを商談の際に言って、ご当地意識をくすぐることが出来るので非常に有効です。

望月:エリアバージョンは電波で流すのですか?

和田:ええ。全国31エリアぐらいあるとおもうのですが、電波エリアごとにバージョンを変えています。

望月:その甲斐もありハイボールは大ヒットし、ウイスキーは低迷期を脱したわけですね。

和田:角瓶が売れたのはもちろんなのですが、ウイスキーの総市場が伸びて、前年を25年ぶりに上回ったんですよ。ウイスキーそのものを買う人が増えたんですね。
正直、僕らもここまで上手くいくとは思っていなくて、商品が足りないくらいです。ウイスキーってすぐに出来るものでは無くて、10年ごとに予測して作らないといけないんです。だから今作っているウイスキーは10年後の未来のためのものなんですよ。だから、大変です。嬉しい悲鳴ですけどね。

【プレミアムモルツのキャンペーン】
望月:和田さんはプレミアムモルツのキャンペーンを手掛けていらっしゃるそうですね。

#ザ・プレミアムモルツ 「最高感謝」編


#ザ・プレミアムモルツ 「竹内いきます」編


和田:ええ。矢沢永吉さんと竹内結子さんのCMにご出演頂いている、結構長いキャンペーンですね。おかげさまで、プレミアムモルツのキャンペーンによりサントリーのビール事業が46年ぶりに黒字に転換したんですよ。

望月:46年も赤字だったんですか!よく我慢してきましたね。

和田:プレミアムモルツのおかげでビール市場のシェアは3位になることが出来ました。プレミアムモルツは広告が相当効いているんですよ。
これまでも最高金賞受賞などプレミアム感をアピールする広告をしていたのですが、最近始めた「金曜日はプレミアムモルツの日」というキャンペーンが非常に当たりまして、本当に金曜日になると売り上げが上がるんですよ。割とお客さんって素直なところもあります。こういったライフスタイル型のメッセージを世の中に発信するというのが、サントリーの宣伝のDNAだと思いますね。

#金曜日はプレミアムモルツの日 キャンペーン
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望月:生活に深く関与し、実際にお客さんに新たなライフスタイルを取り入れてもらうということでしょうか?

和田:随分昔の話になってしまいますが、サントリーは高度経済成長期の時に「トリスを飲んでハワイに行こう」というキャンペーンをやったんですね。
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それは当時、海外旅行は高嶺の花で本当に限られた人しか行けなかったんですが、頑張ってトリスを飲んで働けばいつかはハワイに行ける日が来るから、未来を夢見て頑張ろうというメッセージを提案するものだったんです。ウイスキーが明日への活力だと。
また、サントリーは「金曜日はワインの日」というキャンペーンもやったのですが、それはちょうど日本に週休二日制が導入されるタイミングだったんですね。土曜日から金曜日がハッピーな日に変わります。金曜日は花とワインを買って家に帰りましょう。楽しい食卓が待っていますよというメッセージを提案するキャンペーンだったんです。
そんな中、いま不況の日本の金曜日にもう一度元気を取り戻したい。そのために皆一週間頑張りましょうということで、金曜日はプレモルの日ということでリバイバルしているんです。

【楽曲紹介2】
望月:このあたりでもう一曲ご紹介頂けますか?

和田:では「I love you & I need you ふくしま」という曲を。この曲は福島県を応援する曲なのですが、僕も震災の時は東京に居て怖い思いをしましたし、僕の知り合いも東北に居るので何かできないかと思っていたんです。そんな中、この曲のプロモーションビデオは47都道府県の人が出演する映像になっているのですが、たまたま僕も愛媛県代表として出演することになったんです。

望月:プロモーションビデオに出ているんですか!それはまたどういったきっかけで?

和田:この企画をされている箭内道彦さんは僕の派手仲間なんですよ(笑)。彼は福島県出身で、今本当に福島のために頑張っているんですね。そうして彼から「手伝ってもらえないか」と連絡を受けて、この身一つで良いなら何でもやりますと言って出演することになったんです。この曲は、本当に良い曲だなと思っていて。辛い時や悲しい時に何が一番大切かと色々な人に聞くと「名前を呼んであげること」という答えが沢山返ってきたんです。例えば小さな子供が道に迷った時、「○○ちゃん」と名前を呼んであげることはとても大切なことらしいんです。そういった意味で、今路頭に迷っている福島の人に「福島」という名前を連呼して「福島のことを忘れていない」「福島のことを愛している」と伝える応援ソングであるこの曲に励まされている人はすごく多いと思いますし、僕もこの曲を聞いて頑張ろうと思いました。だから、皆さんにもこの曲を聴いてもらえたらと思います。

#2 猪苗代湖ズ「「I love you & I need you ふくしま」


【サントリーのメッセージCM】
望月:震災が発生し、各企業さんは色々な対応をされたと思いますが、サントリーさんはどのような対応をされたのでしょうか?

和田:サントリーでは「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」の2曲を歌のバトンリレーにしたCMをオンエアさせていただきました。



望月:この企画はどのようにして決まったものなのでしょうか?

和田:震災が発生し、会社で義援金を送るといったことは勿論するのですが、サントリーの宣伝部長として自分にしかできないことは何かないだろうかと考えると、それはやはり広告の力で皆を元気にすることだと思いました。
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サントリーが得意とするライフスタイルを提案したり、メッセージを伝える力を今こそ使うべきときじゃないかと。そんな中、震災が起きて3日後ぐらいに、他の企画で温めていた「『上を向いて歩こう』で日本を元気にしよう」というアイデアが使えないかという提案があり、それをやってみようということになったんです。こういうときはスピードが大事なんですね。
サントリーはオーナー会社なので上に一発通して企画にお墨付きをもらい、さらに代理店さんの制作チームにも声をかけて4日目か5日目には体制が整って、次の週から収録が始まり、3週目にはオンエアがはじまりました。総勢71名のタレントの方にご出演頂き、サントリー史上例を見ないようなCMになりました。

望月:企業のCMが一斉にストップし、ACのCMが大量に流れる中でサントリーさんのCMは非常に目立つものになりましたね。

和田:ACは決して悪くないのですが、あそこまで大量に流れると人によっては拒否反応もあったと思います。そんな中で歌が皆を元気にするというCMは、多くの方に喜んでもらうことが出来たのではないかと思います。

望月:反響はいかがでしたか?

和田:サントリーにはお客様センターがあって、そこにお客様のお声が届きます。また個人的にもtwitterを見たりしていたのですが、皆さんから感謝のお声を頂くんですよ。広告をやっていて、これまでにも好きだとか嫌いだとか面白かったといった反応はあったのですが「ありがとう」という反応はほとんどありませんでした。
今回のCMをやって皆さんから「ありがとう」というお声を頂いて、本当にこの世界で生きてきてよかったなと思いましたね。広告には力があるし、これからも信じていけるなと思いました。

【今後について】
望月:これから和田さんはどんなことをやっていきたいとお考えですか?

和田:僕の仕事のポリシーに「前向きな公私混同」というものがあります。先にも言いましたが、僕は商品のパッケージやネーミングから広告の出口まで全てをプロデュースして世の中をワクワクドキドキさせる仕事がしたいと思っていますし、実際に取りかかっている最中のものもあります。

望月:これからも面白いキャンペーンが生まれてきますね?

和田:乞うご期待です(笑)。

望月:商品開発を見据えながら宣伝を考えていくことが、本当に大きなパワーを生み出すのでしょうね。

和田:やはり商品こそが最大のメディアだし、最大のメッセージを生み出すものだと思います。

望月:これからも素晴らしいキャンペーンを期待しています。本日のツタワリストはサントリー酒類株式会社宣伝部長の和田龍夫さんでした。ありがとうございました。

和田:ありがとうございました。

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