Interview_honda of Communication Design Lab 望月衛介・音楽と広告

HOME > Interview_honda

本田亮(エグゼクティブクリエーティブディレクター)

【広告への関心のきっかけ】
望月:元々は広告をやろうと思って、電通に入社されたんですか?

本田:そうですね。元々は広告をやろうと思って電通に入ったんですけど、その前は広告ではなくて写真家になろうと思っていた時期がありましたね。

望月:何をきっかけにして、写真家を目指そうと思ったのですか?
IMG_2388.jpg
本田:一枚の資生堂の格好いいポスターを見まして。こういうことが自分の将来の仕事として出来たら良いなと思ったことがきっかけですね。

望月:すると、やはり広告が最初のきっかけですか。

本田:そうなんですよ。僕の場合は、非常に平凡な高校生だったので、市役所か何かに勤める人生なのかなと思っていたんですよね。うちの親父も東京都庁の職員なので。僕は割と普通の家庭に育っていて、将来広告のように芸能人を相手にする仕事をする世界に、自分が行くなんて思いもしなかったですね。

望月:なるほど。

本田:実は高校三年生の夏に自分の勉強が思う様に行かなくて、すごく進路に悩んだんです。その時は勉強を全くせずに、自分の将来のことだけをイメージしながら色々な本を読み漁ってみたりして。そこでふと自分の原点に立ち戻って、「自分はいったい何が好きなんだろう」と素直に考えてみると、駅に貼ってある資生堂のポスターや、テレビから流れてくるCMの世界といったものが非常に好きだったんですよ。当時のCMは「夢」を表現している事が多かったんですね。今のCMは現実の生っぽいストーリーの中で、おかしさを追求する部分があります。しかし当時は現実離れしているものこそが、広告だったんです。CMの中に、とてつもなく恰好良い男と女が出てきたりとか、物凄く素晴らしい風景が出てきたりとか。日常のどろどろとしたような雰囲気からはとにかく掛け離れた理想的な世界で、夢を商品と一緒に売っていくというのがCMの世界で。僕が将来やるとしたら、当然日々の暮らしという単位の中では色々な事があるだろうけど、仕事をする上では夢っぽい事をやりたいなと。そこで自分はそれまでは平凡な公務員になろうとしていたにも関わらず、もしかしたら広告をやっちゃおうかなと思ったんですね。

望月:そこで突然写真なんですか?

本田:広告の世界がどのようにして出来ているのかを知らなかったので駅にあるポスターを見た時に、「ビッグサマー」と書いてある資生堂のポスターがあったんですけど、やはり圧倒的に写真のパワーだったんですよ。キャッチフレーズは「ビッグサマー」しか入って無かったですし。するとコピーライターって何をやっているのだろう?と思いまして。他にもアートディレクターは一体何をやっているんだろう、クリエイティブディレクターなんて全然見えてこないなと思ったんですね。だから、「写真家こそが広告を動かしているんだ」と信じてしまったんです。僕は写真を一枚も撮った事が無かったんですけど、そこで写真学科を急に志望したんですね。

望月:当時は色々な著名な写真家の方が活躍されてらっしゃいましたよね。

本田:ええ。当時は写真の時代だと言われていました。篠山紀信や沢渡朔、横須賀功光、加納典明とメディアを賑わしているのは写真家ばかりだったんですよ。写真の時代が終わった後にコピーライターの時代が来て、その後CMプランナーの時代が来て、クリエイティブディレクターの時代が来ると。大体広告界はそのように流れてきています。そして当時は写真家の時代だったんです。

【大学時代の話】
望月:大学は写真科に進まれたのですか?

本田:ええ。日大芸術学部写真学科というところに入っちゃいました。で、入ってみたらそこには写真家の息子だとか、写真部にずっと所属していた人であるとかずっと写真をやってきた人だらけだったんですよ。写真を一枚も撮ったことは無いけれど写真家になりたいだなんて人間は、僕一人でしたね。
望月:すると、やはり苦労されましたか?
本田:物凄く苦労しました。毎回全部ゼロから入るというパターンが多くて。写真学科に入った時も、クラスの中で自分はビリだなと。トイレに入った時に一番下のところに印を付けて、「自分は底辺なんだから、ここから這い上がっていかなくては」と思った事があります。

望月:その後、見事写真家になることは出来たのですか?

本田:写真家になる直前までは行きました。というのも、資生堂に本当に行ったんです。そこで写真家になるための入社試験に受かりまして。

望月:あ、そうなんですか。
IMG_2410.JPG
本田:そうなんですよ。ところが、実は学生時代から資生堂にはアルバイト的な感じで通っていたのですが、現場に行くと訳の分からないアートディレクターがやって来てですね、指示をしてるんですよね。ここはああやれと。もう何なんだ、あの失礼なやつは!と思いまして、よくよく聞いてみると「あの人がアートディレクターですよ」と。そしてその後ろにはさらにクリエイティブディレクターがいて指示をしていたりして。あれ、写真家って随分指示をされているなと思って、すごくショックを受けたんです。もしかしたら、俺がやりたいのはこれじゃないかもしれないと。だからそこから急遽また方向変換をして、電通の試験を受けたという流れなんです。

望月:すると、その四年間は何だったんだということにはなりませんでしたか?
本田:その四年間で写真の技術を身に付けた事で活かされている部分はあると思います。広告全体をまとめる上で写真の技術を身につける事が無駄だったとは思わないのですが、ただ道程が遠回りだったかもしれないとは思いますね。

【駆け出しプランナーの頃の話】
望月:そこで見事電通に受かったんですね。そのままクリエイティブに行く事は出来たのですか?

本田:電通にはCMプランナーで入社したので、最初からクリエイティブです。

望月:CMプランナーで入社したというのは、やはりCMが作りたかったということですか?

本田:そうですね。ただ、CMを作りたいとは言っても実際に作った経験がある訳では無いので、周りに居る先輩がすべて天才に見えましたね。その時もトイレに入って一番下のところに印を付けました。笑 

望月:夢描いていた広告を作る会社に入ってみて、その場は理想郷でしたか? 

本田:ものすごく忙しかったんですけど、元々平凡に暮らそうと思っていた僕にとっては毎日が刺激に満ちていました。自分がやりたいことや、楽しい事で忙しい分にはそれは全く苦にならないんだなということを思いましたね。

望月:やはり仕事は忙しかったですか?

本田:いま思い出したんですけど、僕は小学校の時に先生に「将来の夢を書きなさい」と言われて、「サラリーマン」と書いたんですよ。笑

望月:ふふふ笑 普通は総理大臣とかスポーツ選手と書くところですよね。

本田:先生に「本田君、書きなおしなさい」と言われました。笑 そのぐらい僕は平凡な人間で、段々とおかしくなってきてるんですね。流れが逆なんです。

【楽曲紹介1:影響を受けたCM】
望月:なるほど。そんな本田さんが、高校生の時に影響を受けたCMというのは何ですか?

本田:僕の進路にも大きな影響を与えた当時やっていたコカコーラのキャンペーンの歌で、ピンキーとキラーズが歌った「新世界」とか、赤い鳥が歌った「The Real Life」。あれはCMの世界で描かれているものもすごく美しかったのですが、歌詞の中に人生の考え方のようなものが含まれているんですよ。「誰も自由だよ、生きていく時は」という歌詞があるのですが、ああいう歌詞を聴いて「ああ、そうか」と吹っ切って、「自分の人生だから、決められた道を行くよりも自分が好きなこと、やりたいことをやろう」と思いまして。そうして理工学部志願から一気に写真学科志願に切り替えました。そういう意味ではCMソングこそが自分にとっての哲学書のようなところがありますね。

望月:では、曲紹介をお願いします。

本田:コカコーラのテーマソングで、ピンキーとキラーズ「新世界」と赤い鳥「The Real Life」です。

曲1:ピンキーとキラーズ「新世界」
曲2:赤い鳥「The Real Life」


望月:何といいますか、時代を感じる曲でしたが、夢がありますね。

本田:本当に僕はこの曲のあたりから自分の進路を決めて、そこから今に至るまでずっと同じ道の人生ですね。

望月:そのぐらい大きな影響を与えた曲なんですね。

本田:高校三年生のあたりのどう生きるかと悩んでいた時期に、CMに励まされたりしながら決めた生き方でして。電通のエグゼクティブクリエイティブディレクターになったり、環境問題のイラストを書いたりですとか、あと転覆隊という川のチームで世界中の川を下ったりということは、「誰も自由だよ、生きていく時は」というハートの下に続いているという感じですね。僕はこの曲を聴いて、すぐに車で日本一周に出発したぐらいでして。笑

【CM制作の上でのスタンス】
望月:本田さんは、やはり電通に入って、そういった人の心を動かすCMを作ってやろう!という感じだったんですか?

本田:ええ。ところがですね、実際に入って作ったCMはコカコーラのような美しいCMじゃなかったんですよ。あんなにコカコーラのCMに憧れていたはずなのに、入ってみたら逆にコカコーラのようなものではないCMを作ろうと思ったみたいで。

望月:それは何故なのですか?

本田:やはりCMを作る側に回るとですね、CMのアイデアだとかストーリーの面白さといったものが重要になってきて。とにかく綺麗な風景だとか恰好良いモデルを使って全体のトーン&マナーだけを重視して作っていくCMというのは、プランナーとしては面白くないわけです。カメラマンの人の世界なんかでは面白いのかもしれないですけどね。だからトーン&マナーだけで見せていくCMよりは、ストーリーが面白いとかアイデアがあるだとか、そういったものばかりを目指していましたね。

望月:時代の変化というのもあったのですか?

本田:それもありますね。コカコーラ自体がそういったキャンペーンでは売れなくなってきて、形を変えてきましたからね。CMが恰好良いことばかりを言っていても駄目だと。もっとダイレクトに商品の機能を打ち出さなくてはいけないとか、よりストーリー重視型になっていったりしていることは事実ですね。

【伝わるCMとは】
望月:そのようにして様々な作品を作っていった中で、手応えがあり、「伝わった」と感じたものにはどのような作品がありますか?

本田:何百本、何千本とこれまで作ってきたのですが、皆さんがよく知っているものを挙げると「ピッカピカの一年生」というCMですね。初期にはあまり大きな影響力になるとは思ってはいなかったのですが、それがどんどん広がっていきました。今では世界で一番長いキャンペーンと言われるような形で発展しているので、これは色々な人の心に届いて支持をされ、大きくなったのかなと思いますね。


望月:あのキャンペーンは何年ぐらい続いていますか?

本田:ちょっと分からないですね。僕らの後にも何人ものプランナーが引き継いで続けているので、軽く10年ぐらいは続いていると思いますけど。何度か小学館があの形を変えようとしてチャレンジをしたのですが、結局あの形に戻って続いてきていますからね。

望月:その中で一番人々の心をつかんだ部分ってどんな部分でしょうか?

本田:それこそコカコーラとの対立なのかもしれませんが、綺麗に恰好良く美しく作るのとは逆にダイレクトに生々しく、しかもCMに素人をごろっと出してしまうことのインパクトを狙ったというのが大きかったとは思います。当時のCMは、例えばフジカラーのCMがそうだったのですが、それこそ食べちゃいたくなるくらい可愛い子供を出しているものが多かったんですね。そこでピッカピカのキャンペーンの場合は逆にこっちが食べられてしまいそうな男の子を出そうと。そういったインパクトを狙おうと。

望月:なるほど。やはり時代によって受け入れられる表現は変わっていくということなんですね。

本田:その時代の空気やブーム、人々の考え方というものを反映して、その中でヒット広告が生まれるのだと思います。
IMG_2405.JPG

望月:なるほど。

【ソーシャルソリューションとは】
望月:本田さんは電通エグゼクティブクリエイティブディレクターということですが、所属している部署が「ソーシャルソリューション局」という、ちょっと言葉としては聞きなれない感じのところですね。「ソーシャル」と「クリエイティブ」というのが言葉としては素直に繋がらない感じがするのですが、これはどのようなことなのでしょうか。

本田:僕はソーシャルとクリエイティブの二つを兼務しているのですが、ソーシャルソリューション局というのは今から二年半ぐらい前に出来た新しい局なんですね。世の中が成熟してくると、昔のようにどんどん高度経済成長をして、どんどん新しいものを買い続けるというような世の中だと地球が持たなくなると。そういったことが誰にでも分かってきているので、やはり企業の商業活動も自分達が成長することと同時に、地球環境だとか自分達の周りもハッピーにしていかなくてはいけないと思うのです。いま、自分自身のメリットや利益と同時に、周りのメリットや利益も考えていかなくてはいけないという動きが出てきています。そういう動きのことを、ソーシャル消費やソーシャルコミュニケーションという言い方をしています。ただ単にでかい目立つ広告キャンペーンやタレントを起用した広告キャンペーンをするという考え方ではなくて、企業にとっても消費者にとっても良いキャンペーンをしっかりと地に足の付いた形で仕上げていく。そういう専門チームを作ろうと言うことでソーシャルソリューション局が出来てきたんですね。

望月:局ということは、かなり大きなセクションですよね。それだけボリュームのある社会要請があるということなんですね。

本田:そうですね。

【ソーシャル活動の原点の話】
望月:元々本田さん自身は、そういったソーシャル的なことに興味があったのですか?

本田:僕は今から21~22年ほど前に、環境問題に突然思い立ちまして。

望月:そんな前からですか。

本田:ええ。当時たまたま長良川に河口堰を作るという建設省の動きがあったんですね。それに対して日本中の川下りの人が結集して反対運動をやったことがあるんですね。僕はちょうどカヌーを始めたばかりだったのですが、その人達と一緒に(運動に)参加しようと。そこでカヌーに「長良川河口堰反対」とか「美しい自然を残せ」とか「ダムの無い川を残せ」といった垂れ幕を付けて、仲間五人ぐらいと長良川を下った事があるんです。その全員が100メートルから200メートルぐらいで沈没しまして。笑

望月:ははは。笑

本田:川に垂れ幕を流して、むしろ汚染をしてしまって帰って来たことがあるんですよ。それに自分たちなりにショックを受けまして。俺達何をやっても駄目だなと思ったんです。

【環境問題を伝えるために】
本田:何か良い方法でアピールできないかなと考えた時にふと思ったのが、やはり自分の仕事のことでして。自分の仕事は、ちょっと難しいとか取っつき難い商品をいかに楽しく分かりやすくインパクト強く伝えるかという広告の仕事なわけです。広告で自分が培ってきた技術やアイデアを使って、環境問題を皆にとって分かりやすく楽しく伝えることが出来たら良いんじゃないかなと思ったんです。そこで環境問題を伝えるために、環境をテーマにした漫画を書こうと思って、21年前に書き始めたんですね。それまで(漫画を)一枚も描いた事が無かったんですけど。

望月:それまで絵はやったことが無かったんですか?

本田:全く描いた事が無かったんですよ。

望月:すると、またゼロからのスタートですよね?

本田:またトイレの一番下からです。笑 で、その時に僕が一番最初にやったのは、銀座の個展会場に行って「個展やらしてくれ」と頼むことだったんですよ。

望月:そこからですか。笑

本田:すると個展会場の人が、環境問題をテーマにした漫画だなんて素晴らしいですねと言ってくれて。どんなものなのか見た事が無いから見せてくれませんか?と聞いてきたんですよ。で、僕は「まだ描いた事が無いんです」と。笑

望月:ははは。笑

本田:個展会場の人に「いい加減にしてくれ」と言われまして。そこから一年ぐらいかけて練習して描くといった感じでしたね。

望月:そうして生まれた作品が、「エコノザウルス」ですか?

本田:はい。人間のことを皮肉って、経済で大きくなった恐竜です。その恐竜はいつか絶滅するだろうから、エコノザウルスと名付けようと。

望月:この作品で、展覧会を日本全国で。

本田:そうですね。北海道から九州まで日本全国でやりました。ちなみに今年の二月に五島列島で、三月に岡山でやる予定になっています。
IMG_2387.JPG
【ソーシャルコミュニケーションの話】
望月:やはりソーシャルコミュニケーションの上で環境問題やエコというのは大きいですか?
本田:僕の場合はそうでしたし、世の中的にもエコというのはテーマとして一番大きいんじゃないかなと思いますね。洞爺湖サミットをきっかけとして、日本中の人が「温暖化ってあるんだ」と。「このままのペースで消費活動を続けていたら、孫の代には幸せはやってこないな」ということを肌で感じるようになったのではないかなと思います。

望月:環境関係の話題ですと、最近ではCOP10がありましたね。

本田:COP10では、折り紙で生物多様性を表現するロゴを作りました。折り紙自体が日本独自の文化なのですが、ロゴを作る時には、実際に折り紙で沢山の生物を折りましたね。あと会場では、折り紙を会場中に色々置いて、折り紙の動物からのメッセージを発信すると言う仕掛けを作ってみたり。そういった会議の広報的な面で力を貸しました。

望月:公共性という点では、ACジャパン公共広告機構の作品も数多く手掛けられているということですが。

本田:6年前から電通がやるAC作品は全部僕が関わって作らさせて頂いています。

望月:例えばどんな作品を?

本田:例えばAC全体のテーマとなっている環境問題だとかコミュニケーションの問題だとか、ACが支援活動としてやっている国連世界食糧計画WFPとか国境なき医師団だとか日本臓器移植ネットワークだとかですね。そういった色々なところのCMをキャンペーンとして作らさせて頂きました。

望月:実は最近の動きとして、僕も参加させて頂いているのですが、ドネーションミュージックという取り組みをやってらっしゃいますけれども、これはどんな取り組みですか?

本田:2年前に国境なき医師団のテレビCMを作ったことをきっかけとしています。その時に望月さんに音楽を作って頂いたのですが、その音楽を作ってテレビでオンエアするだけで終わってしまうのは寂しいなと。その音楽を別の形でドネーション、寄付に結び付けることは出来ないかなと考えたものですね。それで音楽をレコチョクなどでダウンロードすると、その際の原盤印税の全てが国境なき医師団に寄付されるという日本で初めてのドネーションミュージックという取り組みをNPOとして立ち上げようと言う事をやりましたね。
dm汎用ロゴ.png
望月:それで今は(対象が)国境なき医師団だけではなく。

本田:そうなんですよ。今年の国境なき医師団のキャンペーンは城南海(きずき みなみ)というポニーキャニオンの歌手が(テーマソングを)やっているのですが、その曲もドネーションミュージックとして登録をする事が出来ました。


また、資生堂の草花木果というブランドの(CMの)曲を坂本龍一さんの娘さんの坂本美雨さんが歌っているのですが、その曲はドネーションミュージックとして登録をして、寄付先をC.W.ニコルさんのアファンの森にしました。これはドネーションの先をアーティストと一緒に選ぶことが出来るというメリットがありますね。


望月:この動きは広がっていきそうですか?

本田:まだ始まったばかりなのですが、問い合わせが非常に多いですね。こういう時代ですし、これから後のCMソングや番組のテーマソングといったものがドネーションミュージックとなるのが一つの常識になるという時代が来るのではないかなという気がしています。

【楽曲紹介2】
望月:ここで一曲ご紹介いただきたいのですが、どのような曲を選曲されましたか?

本田:「今の気分の曲を」というようなことを、最初の際に言われまして。僕の場合のいつもの大体の気分はですね、非常にハードワークという事もありまして、ベッドに倒れこむように家に帰ると言う事もあるんですよ。そこでザ・モップスの「たどりついたらいつも雨ふり」という曲を選曲しました。

望月:では、曲をお聞きください。

曲3:ザ・モップス「たどりついたらいつも雨ふり」


【転覆隊としての活動】
望月:本田さんは実はクリエイティブディレクターのお仕事の他にも、カヌイスト界で著名でいらっしゃいます。転覆隊という活動をされていますね。

本田:転覆隊はカヌーチームなんですが、キャッチフレーズは「日本で一番過激でヘタなカヌーチーム」というものでして。実は過激に見えるのは単に下手だからなだけだという話もありますが。笑 

望月:あえて下手を貫くのは何故なんですか?笑

本田:やはり川で遊んだり、自然と戯れたりして幸せな気持ちになる時というのは、とことん自然にやっつけられた時なんですよね。だからすごくテクニックを磨いて上手くなっちゃって川と遊んでも、オリンピックの競技をやっているような感じで、幸せにはなれないんですね。ひっくり返って流されてぼこぼこにされて、なんとか上がって来てビールを飲むと。それが最高だったりするんです。笑 だから転覆隊は入ってくるときは技術を磨いちゃいかんと。技術を磨くためのチームでは無いと。これは心を磨くチームなんだと。そういうことでして、下手なのを皆で喜び合うというようなチームです。IMG_2404.JPG

望月:転覆隊は何名ぐらいで作っているチームなんですか?

本田:基本的には15名なんですけど、入りたいと言う人も沢山いるので、全部集めていると大変な数になってしまうんですね。大変な数で川に下りに行くと、川へのストレスが大きすぎちゃうから、人数を制限してるんです。ただ、転覆隊というチーム以外にも、僕らと同じことをやりたいとか仲間に入りたいという人が日本各地でチームを作っていまして。それが沈没隊とか轟沈隊だとか……笑

望月:ふふふ笑

本田:あと、楽ちん隊だとかちんどん隊だとか。そういうのが日本各地で組織になってまして。フランチャイズ方式となっております。笑

望月:聞くところでは、満腹隊というのもいるらしいですね。笑

本田:満腹隊とは、この間C.W.ニコルさんのところに行って一緒に飯を作って食ってきました。笑

望月:やはり食事をアウトドアで作って食べると言うのも楽しみの一つですか?

本田:ただでさえ外で焚き火をしながら食事を食べると美味しいんですけど、僕らの場合はその直前に川でひっくり返って流されてたり、山で遭難しそうになってたりとか酷い体験があるんですよ。笑 そこまでを最初にしてから焚き火をして、最上のビールと料理があると、落差が……笑

望月:すると、ゼロスタートというのが基本なんですね?

本田:いや、マイナススタートです。笑

望月:マイナスからですか!笑

本田:マイナスにいきなり行って、そこから一気にプラス10まで行くと。その落差で感動して。僕らが良く言うんですけど、「史上最強の鍋」とか「一生に残るビール」とか。そういうものを手に入れるために行ってると。笑

【今までで一番酷かった体験の話】
望月:今までに行った場所で印象的だった場所とかはありますか?

本田:そういう話をすると、もうとことん……笑

望月:ふふふ。笑

本田:大体皆さんそういうことをお聞きになるんですけど、一番良かった場所となると、ちょっと話しづらいんですよ。なので一番酷かった場所をお話すると、それはアマゾンですね。笑

望月:アマゾンですか。

本田:アマゾンをカヌーで下った経験が、これまでの人生の中で一番酷かったですね。その時一緒に行った仲間は、もう二度と行きたくないと。笑

望月:過酷な体験の連続というか……。

本田:酷いのは、暑さと蚊ですね。川自体は真っ茶色な川でそんなに激流なんかがあるわけでは無いんですけど、蚊と暑さがとてつも無い感じで。夕方からが(暑さが)一番厳しくなるんですよ。夕方に川から上陸してテントを張ろうとしていたら太陽が下がって来て、目に(太陽が)入るようになるんですね。で、その頃、蚊が大量発生するようになって。イメージとしては、サウナ風呂の中に一万匹蚊がいるという……笑

望月:えぇぇ……。まあ、そりゃあその後に飲むビールは美味しいかもしれないですね。

本田:もう、ノイローゼですよ。一刻も早く帰りたい!という。

望月:ははは笑

【今後の活動について】
望月:今後、本田さんはソーシャルと転覆隊のような活動を並行してやっていくと思うのですが、こういったことをやっていきたいという夢のようなものはありますか?

本田:転覆隊的なネタですが、ママチャリで奥の細道に出発しようとしてるんですよ。

望月:ママチャリですか。カヌーではなく。

本田:カヌーではなく。転覆隊は地上もやるんですけど、今までに四国遍路をやったりとか色々やってるんですよ。で、今年はママチャリで奥の細道を走りきろうと思ってまして。大体2400kmぐらいあるんですけど、これをちょっと頑張ってみようかなって思ってます。

望月:是非、怪我の無いように……。笑 気を付けて行ってきてください。

本田:気をつけます。笑

望月:本日のツタワリストは、電通エグゼクティブクリエイティブディレクターの本田亮さんでした。ありがとうございました。
本田:ありがとうございました。

IMG_2413.JPG

TODAY'S EISUKE MUSIC SELECTION